管理職にとって、部下の育成は重要なマネジメント業務の一つです。
これまで自分自身で成果を出してこられた管理職の方々でも、部下が成果を出すための指導をすることにおいては、難しいと考えていらっしゃる方が多いのが現実です。
とくに最近では、部下に対して厳しく指導することが時代にそぐわないため、部下とのコミュニケーションがうまくとれずに育成に悩んでいるという声をよく聞きます。
今回は、コーチングという観点から管理職として身につけたい部下育成の解決法についてお話しします。
目次
管理職が注目するコーチングとは
コーチングは、対話を通じて人の内面にある答えを引き出し、成長のサポートを行うコミュニケーションで、対象者と対等に対話を行うことを基本としています。
つまり、対象者の話をしっかり聞いて質問や提案をし、本人が持っている答えを引き出す方法のことです。
コーチングを用いた育成方法では、管理職の考えに一方的に従わせるということではなく、部下の考えに重きをおき自発性を促すことに注目します。
定期的に対話をする機会を持つことで、部下自身が普段の業務について考える時間を持ち、頭の中で整理することができます。そして、部下の考えたやり方を尊重し、サポートを続けていけば、主体的な行動を促すことにつながります。
要するに、仕事のやり方を押しつけるのではなく、自ら考えて行動する習慣を身につけるということです。一昔前の根性論や精神論はなかなか理解されず、自身の考えを押しつけようものなら一気に距離が遠くなってしまい関係性の修復が難しくなるでしょう。最悪の場合、部下が退職してしまうことにもなるため、早期に立て直しが必要なケースがあります。
コーチングを理解しておけばしっかりと部下の意見に耳を傾けることができるため、お互いが前向きな気持ちになり、結果的に良い方向に進むケースが多いです。
管理職のコーチングが注目されている理由は?
どの会社でも到達目標があり、達成するために切磋琢磨しています。
コンプライアンスの意識が今ほど浸透していなかった時代は、上司からの一方的な指示命令で、無理強いをさせるスタイルが少なからず取り入れられていました。しかし、現在はコンプライアンスの意識が高まり、昔の手法は通用しなくなりました。
そこで注目されているのが、コーチングというわけです。コーチングは、お互いの信頼関係を築き上げ、目標達成しやすい方法として注目されています。
管理職がコーチングをするメリットは?
部下の考える力がつく
管理職としては、部下に仕事を早く覚えてほしい、結果を出してほしいと思い、自分がやってきたことをそのまま教えようと考えがちです。しかし、それでは部下は指示通りにしか動けなくなるため、自主性が損なわれてしまいます。コーチングの対話を行うと、上司からの問いかけに対して部下自身が考え、答える機会が増えます。
このような対話を継続していくことで、部下が普段から自分自身に問いかけ、自ら答えを出すことを習慣化させていきます。その結果、徐々に考える力が身についていきます。
部下の可能性を広げる
管理職が部下に対して指示ばかりしていては、本来持っている部下の能力に気付けませんし発揮もできません。そうなると、思うような成長は見込めないため、管理職からすれば大きな悩みの種になっていくでしょう。
コーチングでは、管理職が自分の考えを話すのではなく、部下の話を聞くことに重点を置いています。そして、部下の意見を業務に反映するためには、どんなサポートができるのかを管理職として考えます。部下自身の意見が尊重されていれば仕事のやりがいを感じることが増えるでしょうし、やる気が高まり、部下の能力が発揮されていきます。そうすることで、次第に部下の可能性を広げていくことになります。
コーチングは部下の可能性を引き出す方法ですから、長期的に取り組んでいけば大きな成長が期待できます。
部下が主体的に行動する
管理職側としては、部下に望んでいるような成長が期待できない時には、もどかしい思いをすることもあるのではないでしょうか。そのような時には、改めて管理職として部下との関係性は築けているか、話ができる環境を作れているか、良いところを認めて伝えているかを振り返ってみましょう。
コーチングを取り入れることで、円滑なコミュニケーションが取れるようになり、将来的なビジョンや目標を共有できれば、部下が主体的に行動できるようになるでしょう。その結果、部下だけではなく管理職自身が成長するきっかけにもつながります。
管理職がコーチングをするデメリットは?
すぐには結果が出ない
コーチングは目標を設定し、そこに向かって行動をしていくものですので、取り入れたからといって今日明日に結果が出るわけではありません。
すぐに結果がほしいとお考えの管理職の場合は、コーチングの手法は不向きかもしれません。
対象者の経験値が低いものは答えが出にくい
コーチングのデメリットに、対象者、つまり部下の知識や経験値が低いと答えが出にくいことがあげられます。業務経験が浅い新人に対してコーチングをしても、結果が出るとは限りません。なぜなら、コーチングは「本人が持っている答え」に気づくための対話であるからです。経験値の低いものに関しては、本人が答えを持っていないこともあります。
この場合、コーチングよりもOJTやティーチングに力を入れて経験を積む方が良いでしょう。業務経験の実績がついてきたところでコーチングを取り入れるようにしましょう。
複数人のコーチングは難しい
コーチングは、学習塾のように複数人を一度に相手にするのは難しいです。
なぜなら、コーチングは1対1でコミュニケーションを取ることが大前提だからです。複数の部下がいる管理職であれば、1人1人に時間をかけてコーチングをしなければならないため、多くの時間と根気が必要になってきます。
その場合は、対話時間の長さよりも頻度の高さを意識してコミュニケーションを取ることが大切です。短い時間でも頻繁な対話を心掛けてみましょう。
管理職がコーチングを行う際に必要なこと?
コーチングのことは、何となく理解していたとしても、いざ実践となると難しいと感じる方も多いかもしれません。まずは管理職がコーチングを行う際に何が必要なのかを知っておくと良いでしょう。
コーチングは、相手の話を聞くこと、質問をすること、長所を見つけほめることの3つが重要とされています。
相手の話を聞く
ただ話を聞くだけではなく、部下の話し方や表情を観察しつつコミュニケーションを取っていきます。部下の発言することは否定をせず受け入れ、共感することが重要です。共感することで、部下は心の扉をひらいてくれコミュニケーションがしやすくなります。
質問をする
質問は質問でも、言い方によって部下のとらえかたが異なりますので注意しなければなりません。問い詰めるような質問をすれば、部下は委縮してしまいます。委縮をすれば誰でも仕事のパフォーマンスは低下します。
部下が委縮しないようにするためには、話しやすい雰囲気を作り、相手の立場や状況を理解する姿勢を示しましょう。そして、部下が考えていないであろう違う視点からの質問を加えてみましょう。
長所を見つけほめる
最後に、部下の長所を見つけてしっかりほめることが重要です。できるだけ良いことは言葉にして伝えることで、部下は自分のことを気にかけてくれているという気持ちになり、意欲もわいてきます。
ただし、育成にはほめることだけでなく、時には叱る場面も出てくるでしょうから、伝えるバランスを考え、適度に対応することが必要です。
管理職がいきなりコーチングをしてもうまくいかない?
管理職が部下とのコミュニケーションに困っていて、なんとかしたいと思っていた場合、いきなりコーチングを取り入れようと考えてしまうかもしれません。しかし、そもそも部下との関係性ができていないのにコーチングを取り入れてしまうと逆効果になってしまう可能性があります。
部下は上司に対して心の扉を閉ざしているはずですから、無理やりこじ開ける方法はお勧めしません。まずは、お互いの距離を縮めるためにも、基本的なあいさつやコミュニケーションをしっかりとることが重要です。
そしてもうひとつ、大切なことがあります。部下とは役職の上下関係はあるかもしれませんが、コミュニケーションにおいては、誰と話す時でも立場は対等であるということです。
部下であっても、常に一人の人として尊重しましょう。
コミュニケーションを取る際に上下関係を作ってしまうと、コーチングの基本である対等なコミュニケーションを取ることが難しくなります。その結果、話しやすい環境が作られなくなってしまいます。
部下と対等に接することで距離が縮まり、本来持っている部下の能力や可能性が見えてくるものです。
まとめ
コーチングは、主体的に行動する部下を育てるために有効な手法です。部下自身が持っている能力を最大限発揮できるように、まずは、相手を受け入れる姿勢を示し、部下が何でも話せる環境づくりをしていくことが大切です。そして、部下をよく観察し、声掛けをおこなっていきましょう。その際は、部下を尊重し、理解しようとする気持ちで接していくことをお勧めします。このようなコミュニケーションを続けていくことで部下の能力が次第に開花し、主体的に行動できる頼もしい人材になっていくはずです。
投稿者プロフィール
- 山口県で管理職・リーダーの育成研修を行う人材育成コンサルタント。「言葉を磨けば人は育つ」の理念のもと、言葉の力を人材育成に活かし企業研修・講演を行う。経営者・経営幹部・起業家対象のスピーチ・プレゼンの個別指導。元テレビ大分アナウンサー。
- 2024年2月26日コーチング管理職はコーチングが必須!部下の育成に悩んでいる上司のための解決法